Media 「離れて働いていても、見てくれる人がいる」兼松シードポートの評価制度と、月1回の1on1

「離れて働いていても、見てくれる人がいる」兼松シードポートの評価制度と、月1回の1on1

常駐先での成果や働きぶりは、離れた場所にいる自社からは見えにくい。だから評価は、取得した資格の数や研修の受講回数といった、目に見えるもので決まりやすい。

SESで働くエンジニアからは、そんな声も聞くことがあります。

兼松シードポート株式会社は、総合商社・兼松株式会社が2025年4月に設立した、社員20名弱のIT子会社です。この規模ながら、4段階のエンジニアグレードと2つの評価軸を設計。さらに月1回を基本とした1on1で、働く人と向き合っています。

なぜ、走り出したばかりの小さな組織が、そこまで評価制度を作り込むのか。代表取締役社長の堺俊浩さんと、エンタープライズサービス部 部長の玉利友聖さんに話を聞くと、返ってきたのは「制度は会社のためではなく、社員のためにある」という言葉でした。

「働く皆さんは宝」スタートと同時に評価制度を作り始めた理由

――兼松シードポートでは、設立とほぼ同時期に、評価制度が設計されました。会社のスタート時点で、こうした制度を作ろうと思われた経緯を教えてください。

堺:人事評価制度は、社員が今ほど入る前の初期に作りました。順番でいうと、給与テーブルのほうが先だったかもしれません。

なぜ小さな会社が、初期も初期に設計したかというと、社員の成長を主観や感情だけで判断しないためです。

もちろん、人が評価する以上、感情が入り込むのは否定しません。ただそこに評価制度という客観的指標があることが、組織運営では大事だと思います。

設計時に意識したことは、一定の能力を発揮する人が、ちゃんとそのグレードに位置づけられるということです。これは前職の経験が大きいですね。年功序列で上がっていくことには、ずっと疑問がありました。ただ、既存の制度には過去の経緯もあり、大きく変えるのは難しい。本当は実力のある人をしっかり評価したいのに、それができないもどかしさがありました。新しい会社なら、制度を一から作れると思ったんです。 

だからうちでは、グレードが上がれば給料はバンと上がるし、グレードが上がらなければミニマムでしか上がらない、という設計にしています。

玉利:前提として、兼松シードポートは、会社のミッションとして人的資本経営を掲げています。ただ、掲げているのに社員にフィットしていなければ、掲げているだけで終わってしまう。だから働く皆さんは宝であり「人財」だと思っています。

少数精鋭の組織だからこそ、その人が力を発揮できる仕事を提供したいし、やりたいこともアレンジしたい。その上で業務パフォーマンスを高めてもらいたいので、一人ひとりのケアにも取り組むというのが、この制度設立の背景にもあります。

現実的に考えても、人事評価制度が曖昧なままだと、能力は正しく評価されず、社員は頑張っても幸せになれないかもしれない。だからこそ、制度は会社のためではなく、社員のためにあるべきなんです。

昇格したいなら、ひとつ上のグレードの目標を立てる

――人事評価制度の仕組みを、言える範囲で教えてください。

堺:エンジニアのグレードを、E1からE4の4段階に分けています。それぞれのグレードで何を求めるのかは、項目ごとに全部言語化して、一覧にしているんです。このグレードなら、この程度のことはできなきゃいけない、というのがひと目で分かるようになっています。

玉利:各グレードにおける評価の軸は2つあります。

ひとつは成果目標。どのプロジェクトに携わって、何をどこまで達成したかを見ます。これは期初に自分で目標を立てて、上長と相談しながら決めていきます。項目は業務パフォーマンス、自己啓発、組織貢献と、あとは自由設定。おもしろいのは、そのウェイトも自分で決められることです。

もうひとつが行動評価です。社内では「コアスキル」と呼んでいます。「どういうスタンスで仕事に向き合っているか」「どのようなビジネススキルや専門性を持っているか」といった、個人が持つ基礎能力を評価しています。

評価軸を分けているのは、プロジェクトの結果には運も絡むためです。たまたま良いプロジェクトに当たったら、スムーズに大きな成果が出せますし、逆もしかりですよね。

そこで、プロジェクトの結果だけでなく、仕事への向き合い方や知識、スキルも含めて評価しています。成果目標とコアスキルの2つを、同じ重みで見る考え方です。 

――評価される側からすると、「どこまでやれば認められるのか?」がいちばん気になるところだと思います。そこはどう伝えているのでしょうか。

玉利:期初の目標設定のタイミングで、はっきり伝えています。たとえばグレードE3の人には、まずE3の目標を書いてもらう。そのうえで「E3の目標をE3の人が達成しても、点数は満点ではないからね」と伝えます。

だってE3の人が、E3向けの目標を達成してもスキル的には当然じゃないですか。だから昇格を目指すなら、E3向けの目標を達成したうえで、E4に相当するチャレンジングなものをプラスアルファで立てて加点してね、と設定のタイミングで話します。

また、目標は定量的に書いてもらいます。曖昧すぎるとブレる要因になりますからね。「あなたの立場だったら、こういうことを具体的に書いてほしいんだよね」と伝えて、持ち帰って考えてもらうイメージです。

堺:目標の評価は、S・A・Bの3段階でつけます。Sがついた人は「昇格の権利を持つ人」になります。ただし自動的に昇格するわけではなく、その後は管理職全員で議論して決めます。

今後も運用しながら、既存の項目を現場の感覚に合わせてブラッシュアップしていく予定です。

離れて働いていても、見てくれる人がいる。ルールを決めない1on1が回る理由

――兼松シードポートでは、上長と離れて働くメンバーも多いと思います。その人たちの状況や成果は、どうやって把握しているのでしょうか。

玉利:基本はチャットベースで会話をしながら、チームの状況によって毎日だったり週に1回の頻度で進捗確認会を開いて、チームの状況や進捗の課題を吸い上げています。

また月に1回、人によってはもっと短いスパンで1on1を実施しています。その時間で雑談を交えながらチームには言いにくい不安や悩みを話したりしています。

今はこのやり方で、フォローアップ体制は作れていると思います。あとは、兼松シードポートではメンバーがオフィスに全員で集まる日が決まっており、そこでもいろいろ会話しますね。

――立ち上げ期から1on1を回されているんですね。頻度が多いイメージですが、どのように運用されているのでしょうか。

玉利:1on1は、基本的に月1回程度の頻度で運用されています。誰かに言われて始めたわけではなく、普通に人に向き合うならやるものでしょって。

ただ、カッチリとした運用ルールは決めていません。入社時に、まず私からヒアリングの場を設けて、「1on1の頻度は、月1回と2ヶ月に1回のどっちがいい?」と聞いています。相手主体で決めるのは、「やりたいのか・やりたくないのか」も尊重したいという想いからです。

もちろん働く様子から「ちょっとキャッチアップした方がいいな」と思ったら、臨時で話す時間も取りますよ。

堺:私は全メンバーの1on1はできないので、気になった人を見つけては、スポットで話す感じです。日頃の会話をするなかで、その人の普段の表情とか、前向きな言葉とか、大事な部分が見えづらいと感じたときに会話しています。

ルール化はまだまだこれからですね。現状としては、「絶対に一人ひとり、きっちり見ていかなきゃいけない」という意識のもと、幹部一体となってやっています

――1on1のルールはないということですが、では、社員の悩みや課題を、どのように引き出しているのでしょうか。

玉利:私との1on1では、あらゆる話を聞いていきますが、視点としては、「本音が出ているのかな?」という部分を見ます。そこでちょっと遠慮しているなと感じたら、堺さんにパスして1on1してもらいます。社長相手だと萎縮するかもと思われるかもしれませんが、うちはやっぱりみんな、堺さんのことが好きなんで(笑)。

堺さんだとポロッと本音も出たりするんです。私はあとでフィードバックをもらい、改善に生かします。

堺:私の1on1では、できるだけ広い視点を見せながら「あなたは全体の中の、ここをやっているんだよ」と話を聞きながら伝えるようにしています。

業務に向き合っていると、本人が見えている世界は狭まりがちです。その結果「本来こうあるべきなのに、こうなっていない!」という誤解も生まれる。だから、悩んでいる人には、必要に応じて全体感を見せると、腹落ちしてくれることが多いんです。

玉利:あと1on1とは別で、毎月記名式のサーベイ(社員の意識調査)をやっています。質問の内容は変えずに回答を定点観測し、その人のモチベーションなどの変化を把握しています。

過去、サーベイの数値がガクッと下がった人がいたんです。その際はすぐに1on1を実施して、「これ、大丈夫?」と聞いて、そこから堺さんと二人がかりで話を聞きました。普段のコミュニケーションは普通に取れているのに、実は課題意識を持っている人もいる。サーベイだと、そういうのが拾いやすいんですよね。 

マネジメント職だけが「成功者」じゃない組織を、これから作る

――「働く皆さんは宝」というスタンスは変わらないと思いますが、これから兼松シードポートは、どのような組織にしていきたいと考えていますか。

玉利:マネジメントとスペシャリスト、2つのキャリアパスが描ける組織にしていきたいと話しています。現在はマネジメント職向けの制度しか作れていないため、スペシャリスト職のキャリアパスはこれから整備していきます。

堺:マネジメントとスペシャリストは、どちらも大事な存在です。しかし組織においては、課長職や部長職など、マネジメントを担いながら昇格していくキャリアのほうが、高く評価されがちです。

兼松シードポートでは、叩き上げで技術を極めたい人にも、しっかりと向き合う会社でありたいと考えます。技術において「この人の右に出る者はいない」という人が報われないのは、もったいないですからね。

マネジメント職でもスペシャリスト職でも、上下なしで、お互いを尊重しながら組織を作っていきたい。まあ、これは僕の憧れでもあるんですけど!

――最後に、兼松シードポートではどのような方と一緒に働きたいと考えていますか。

玉利:兼松シードポートが求めているのは、開発の経験を積んだうえで上流ができる、という素養です。開発をしっかり経験してきた人か、これから開発経験を積み上げていきたい人。そのどちらかであれば合うと思います。

よく面接時に「上流をやりたい」と語ってくれる方がいます。その目標は理解できるんですが、開発が既にしっかり分かっているかは、きちんと見ています。今いるメンバーにも、「(上流は)開発のことが分かってからやってね」と話しています。

堺:うちは少数精鋭で価値を出していく会社なので、自分のキャリアをイメージしながら、自律的に考えて意見できる人はとても重要です。

環境もサポートもしますが、他の会社より早いタイミングで、自分で仕事を見つけてこなせるようになってほしい。年齢は関係ないですね。社会人歴が5年以下の人にも、その人なりの自律性は求めていきます。

―― また、いまの環境で自分の仕事やキャリアが正当に評価されていないと感じている方に、伝えたいことはありますか。
 

堺:うちでは常に「働く皆さんは宝」だと思っています。一人ひとりに向き合いながらサポートしていきたい。それが最終的に組織のパフォーマンスにつながると強く思っているからです。

現在の管理職も全員、自身のチームメンバーに日々向き合っています。だから「これだけできているのに、本当に評価されているのかな」「全然違う軸で見られているな」と感じている人は、うちに来ていただければ、評価への納得感は持っていただける自信があります。何でもフランクに話し合える距離感ですからね!

玉利:あと付け加えるなら、少ない人数でやっているぶん、一人ひとりに合わせられる余地は大きいと思います。その人に合った仕事を提供したいし、やりたいことを聞いてアレンジもしたい。いまの会社で「希望を伝えても、どうせ通らないし」と感じている人ほど、一度話を聞かせてほしいですね。

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